隣室は事故物件
【金欠OL恵美(26)の話】
私の家はあまり裕福ではなかったため短大の学費も一部アルバイト代でまかなうほどでした。
幸いにして希望する就職先に採用が決まり新しいアパートを探すことになったのですが当然予算があるわけでもない私はなかなか決めることができずに困っていたのです。
そんな時にあまり期待できそうになさそうな小さな不動産会社で気になる物件が。
「家賃…3万円!?」
私がその安さに驚くと店員さんは一瞬眉をひそめると
「いや、ここはいわゆる事故物件でして。」
とやや小声で教えてくれました。
なんでもその部屋で人が亡くなって借り手がつかなくなっているのだとか。
幽霊が出るなんてうわさまであって実際にすぐに住人が出ていってしまうため、相場よりずっと安い家賃になっているとのことでした。
さすがに私もそんな部屋には住みたくないと目をそらすとその事故物件の隣の部屋も同じく空き部屋になっているのが目に入ったんです。
「家賃4万円…」
事故物件よりは高いながらも角部屋で日当たりもよさげなこの部屋も相場からすればかなり安い部類。
職場からも近かったためこの事故物件の隣室を借りることにしたのです。
住み始めた頃は事故物件の部屋の前を通る時に毎回寒気がしたのですが新生活が楽しいこともあり次第にそんな感覚はなくなっていきました。

事故物件の隣室に住んでから3ヶ月ほど過ぎたころ。
せっかくの休日ながら前日の残業で疲れていた私はなにをするでもなくソファに寝転がってテレビを見ていました。
夕方近くになって部屋が少しばかり暗くなり、気づけば私はそのまま寝入ってしまったのでした。
目を覚ますともうかなり暗くなってきていました。
一体どれくらい寝たのだろう?
起き上がろうとすると両腕に違和感。
どうも寝方が悪かったのか両腕が痺れて感覚がなくなっていたのです。
血の巡りをよくしようと動かした瞬間左腕が太ももに触れました。
「ヒッ!?」
自分の腕はまるで氷のように冷たく一気に鳥肌がたちます。
おどろいた私が腕に目を向けると自分の腕が異様に長く見えました。
両腕の感覚がなかったために気づかなかったのですがよく見ると私の両手首を見知らぬ手がつかんでいるんです。
しかもつかんでいる腕の先はあるはずの胴体につながっておらずただただ白い腕だけが存在しているのです。
恐怖で我を失った私は腕を思いきり振り回しつかんでいる腕を振り払うともんどりうってソファから転落。
それでもどうにか玄関までたどり着き、玄関のカギをまともに動かない腕を擦り付けて必死に開けて逃げ出したのです。
結局その部屋はすぐに引っ越しました。
後で聞いたのですが元々私の住んでいた部屋と隣の事故物件は一組のカップルが別々に借りていたらしいのです。
痴情のもつれから彼女を殺してしまった彼氏が死体を隠蔽しようと彼女の体をバラバラにして彼女の部屋の冷蔵庫に保管しようとしたのですがどうしても両腕だけが入りきらなかったため隣の自室の冷蔵庫に保管したという話です。
彼女の部屋だった事故物件では腕の無い女の霊が出るのだとか…。
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