死者の謎を解く25枚の写真
【生真面目警察官昭夫(34)】
自分の勤務地は事件が多く起こる地域でありその中には行方不明事件も数多くあります。
でも今回お話しする事件はそんな中でも特に奇怪な事件でした。
ある日警察にA子さん(仮名)から電話がありまして、なんでも毎日写真がポストに投函されているというんです。
最初は何かのいたずらだろうと思っていたA子さんも2週間も写真が届くとさすがに気味が悪くなって警察に相談することにしたんだそうです。
最初は実害もないしもうちょっと様子を見るようお願いしたのですが…その、きちんとA子さんに誠意をもって対応してないと思われたんですね、感情的になって怒り始めまして。
こりゃ仕方ない、一応行くだけ行かないとと思ってA子さん宅へお伺いしたんです。
A子さんの自宅はかなり古くお手入れも長いことしていないような佇まいでした。
玄関の曇りガラス越しに見えるゴミ袋の山が憂鬱な気分を増幅させます。
コンコン。
「こんにちは~○○警察のものですが」
呼び鈴も壊れたままだったので少し声を大きくして呼びかけるとほどなくして女性が近づいてきてドアを開けます。
鋭い眼光でこちらをうかがってきたこの女性が電話をしてきたA子さん。
36歳ということですが苦労がしみ込んだような顔のシワは50歳といわれても疑問に思わない感じでしたね。
ロクに挨拶もないまま家のリビングに通されるとすぐに彼女は封筒をテーブルの上に放り出します。
失礼して中身を確認すると中には15枚の写真。
「航空写真…か?」
15枚の写真はすべてどこかの場所を真上から撮影した航空写真のようなものになってました。
ただ、尺度的にはそこまで高空から撮られたものではなさそうでしたね。
とりあえず写真を署に持ち帰って調査するという形でA子さんをなんとかなだめてその日は帰ることにしました。

その後の調べでわかったんですがA子さんはもともと結婚しており7歳の息子さんがいたんです。
半年ほど前に夫と離婚してほどなく息子さんが行方不明となってその時に事件事故の両面から警察が調査をしていたのです。
結局息子さんの消息はつかめないままとなっていましたが…。
さらに私は持ち帰った写真がそれぞれ1枚1枚ジグソーパズルのピースのようにつなぎ合わせることができる事に気づきました。
全部で何枚になるのかはわかりませんが最終的に全部の写真を合わせると一つの大きな写真になるようで、A子さんの自宅からそう遠くない山間部の写真であることもわかりました。
こうなると疑問になるのが誰がこの写真を投函しているのか?ということ。
A子さんの話では夜のうちに投函されているらしいのですが…。
不思議なことに私がA子さんの自宅そばで張り込みをしていてもいつの間にか朝になると例の写真が1枚ポストに入っているのです。
日に日に写真のパズルは完成していきちょうど5枚×5枚の計25枚の写真の真ん中の1枚だけが欠けたような構図になったところで写真の投函が止まりました。
投函が止まって一週間も過ぎると私は抜けたピースが埋まることはもうないのではないかと思うようになっていました。
真ん中の写真だけないことになにか意味があるのではないか、と。
なので思い切ってこの写真の欠けた場所へ行ってみることにしたのです。
山道からそう遠くない森の中、一か所だけ他と比べて草木の生え方がまばらな場所があり、掘り返してみると…子供の遺体が埋まっていたのです。
子供はやはりというか、A子さんの息子さんでした。
そして息子さんの衣服には1枚の写真が…。
え、最後の1枚の写真かって?
いやいや、写真はお母さんのA子さんと息子さんが一緒に写ってるいたって普通の写真でした。
裏側に書きなぐったような字で
「ママにころされる」
と書かれてた以外はですけどね…。
A子さんは夫との離別で精神を病んでしまって息子さんに虐待をするようになっていたみたいなんですよ。
行き過ぎて息子さんを殺してしまったA子さんが遺体を山に埋めたというのが真相だったんですが、一体あの写真を誰がどうやって投函したのかはいまだ謎のままです…。
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