【怖い話】パワハラで辞めたアルバイトのロッカーが…恐怖百物語第五夜「怖くない話」

【怖い話】パワハラで辞めたアルバイトのロッカーが…恐怖百物語第五夜「怖くない話」 怖い話

怖くない話
【バイトマスター紗綾(27)の話】

これは私は某大型量販店でアルバイトをしていた時の話。

結構な数の従業員がいる店だから休憩室はいつも大賑わいになるんだけど、その日は珍しく一人きりでの昼食にちょっとさびしさを感じてたんだ。

孤独に昼食のサンドイッチをつまんでいるとフラッと休憩室に入ってきたのは一人の太った男性従業員。

「ゲッ」って言葉が出るのをあわてて抑える。

コイツは裏方担当の佐々木って人。

所属する部署が違うのと漂う陰気な雰囲気があまり好きになれずほとんど話したことがない感じ。

長テーブルをはさんで対面にドスンと座る。

間違いなく「肥満」にカテゴライズされるだろう体重の振動がこっち側まで伝わってきた。

汗だくでコンビニのおにぎりをポロポロこぼしながらがっついて食べる姿はとても不快。

なんでわざわざ対面に座るかな…。

私がそんなことを考えていると、

佐々木「紗綾さんって怖い話って好き?」

ご飯粒を口の周りにたくさんくっつけたまま聞いてきたの。

「いや、あんまり好きじゃないです。」

ここで好きなんて言おうものならせっかくの休憩時間が聞きたくもない佐々木の怖い話で無駄になっちゃう。

佐々木「そうなんだね、でも安心して。これは怖そうで怖くない話だから。」

…なんでそうなるかな。

こっちの落胆など気づかないまま勝手に話を始める佐々木。

【怖い話】パワハラで辞めたアルバイトのロッカーが…恐怖百物語第五夜「怖くない話」

佐々木「これは実際にここの店で起こった話なんだけどね。」

佐々木「前に山本って人が働いていたんだけど…正直あまり社交的じゃくてね、ずっと無口だったんだよ。」

佐々木「そのせいか松井店長にあまり好かれなくてね、いつもちょっとしたことでひどく怒られたりしていたよ。」

「あの温厚そうな松井店長が…?」

佐々木「うん、当時は結構好き嫌いが激しい人だったんだ。そしてある日事件が起こった。」

佐々木「山本が不注意で高額な商品の発注数を2桁も間違えて店に大損害を出してしまってね、その時はいつも以上に店長にメチャクチャに怒られたんだ。」

佐々木「いつ終わるとも知れない説教に最初は黙って聞いていた山本もついには切れて話の途中にもかかわらず勝手に帰ろうと更衣室に入ったんだ。」

佐々木「でも怒りが冷めやらぬ松井店長が帰すまいと更衣室前まで押し掛けたせいで山本は更衣室に立てこもる形になってしまった。」

佐々木「結局更衣室から2時間出てこれず山本が警察に電話したせいですごい大事件になってしまったよ。」

「そんなことが…それは大変でしたね。」

佐々木「山本は次の日から出勤してこなくなったけど店長もこれ以上関わるのはマズいと思ったのか何事もなかったかのようにしてたね。」

佐々木「それ以来かな、店長がパートに対してあまり怒らなくなったのは。」

佐々木「事件はそれで終わったかと思われたけど…その後奇妙なことが起こったんだ。」

「奇妙なこと…ですか?」

佐々木「紗綾さんも知ってると思うけど…更衣室ってベージュ色のカーペットがひかれてるよね?」

「確かに…ひいてありますね。」

更衣室は男女とも外から見えないようになっているがすぐ入口で靴を脱いで中のカーペットエリアで着替えるようになっているのは同じだ。

佐々木「山本が使っていたロッカーの前のカーペットに小さな黒っぽいシミができたんだ。」

佐々木「最初は小さくうっすらと見える程度だったシミが時間の経過とともにだんだんと大きくはっきりしてくると周りの人は山本の呪いなんじゃないかとウワサし始めた。」

佐々木「店長も山本の呪いなんて言われるのが嫌だったんだろうね、わざわざ一度カーペットを新しいものに張り替えたんだ。」

佐々木「でもね、そんな店長をあざ笑うかのようにやっぱり山本のロッカーの前には黒いシミが広がっていく…」

佐々木「紗綾さん、ちょっと怖いと思っちゃった?どう?」

「え、ええ…」

内心得意げにしている佐々木にいら立ちを感じつつもしかたなく相づちを打つ。

佐々木「でもね、実はこれ、タネが分かればなんてことない話だったんだ。」

佐々木「あとからバイトで入った江崎がしょっちゅう土足で更衣室を使うから江崎のロッカー前がどうしても黒く汚れていってしまったんだよ。」

佐々木「ほら、江崎のロッカーって山本のロッカーのすぐ下にあるんだ。みんなは山本のイメージが強かったからミスリードされてしまったってわけ。」

佐々木「ちまたで言われる幽霊の正体なんてわかってみればみんな案外そんなもんなんじゃないかなぁ、ね?怖くなかったでしょ?」

佐々木「おっと、そろそろ仕事に戻らないと。」

そういって佐々木は休憩室から出ていったけど私は怖くて自分の体がちょっとふるえてるのを感じてた。

だって…佐々木の話した江崎ってきっと今も働いてる女性の従業員の江崎さんのことだよ?

じっさい女子更衣室の江崎さんのロッカーの前は黒いシミがあって少し気になっていた。

でもそれは更衣室の外からでは見えないシミだったわけで…。

それに江崎さんはきっと更衣室に誰もいない時だけ土足だったんだろうけど…それを佐々木はどうやって知ったんだろうね?


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