バイト開始までの天国の7日間
アルバイトが決まり初出勤は一週間後からとなりました。
在宅期間が長くうまく他人とやっていけるか一抹の不安はありましたがそれでも自分の中では安堵の気持ちの方が強かったです。
とにかく多少なりとも収入があればもう貯金を切り崩していく必要もないし在宅ワーク時から渇望していた他者との関わりにも期待していました。
「自称パニック障害」も自由過ぎるゆえの不摂生による自律神経の失調と、友人のいない孤独感によるストレスのせいだと思っていたのでアルバイトとはいえ社会に出ることで全てが好転していくことを期待していたのです。
母親も多少は喜んではくれたようでとりあえずバイトでがんばるようにと言ってくれました。
本当に母親には苦労をかけっぱなしでしたね(汗)
面接時に不良商品を組み上げたり廃棄したりする仕事をしてほしいと言われていたので心配していた体力面もどうにかなりそうでした。
実は今回のアルバイト募集に際し自分以外に2人の男性の採用が決まっており力仕事はそちらにまわされていました。
自分のメイン作業が軽作業だったのは良かったのですが同時採用の2人はじぶんよりも10才ほど若く自分がアルバイトなんてしている歳じゃないと痛感させられましたね。
パートで働く方は圧倒的に既婚の女性が多く、きっと男手が足りないため採用枠が多かったのでしょう。
そうしたところも運が良かったと言えます。
バイト開始後の新鮮な6日間
さて、いよいよアルバイト初日がやってきました。
バイトとはいえたくさんの既存の従業員の人たちの中に何も知らない新人として勤務するのですからうまく輪に入っていけるか不安はありました。
ましてや自分は35才という世間一般ではバリバリ正社員として働いていて当然の年齢。
若い社員さんにいじめられないか心配でした(笑)
最初の仕事は同時採用された2人と共に裏方として働くための簡単な基本作業の教育。
教育係の人が丁寧に説明してくれるのですが久しぶりの他者とのコミュニケーションに戸惑いあまりうまくは実行できませんでした。
始めて使う無線も常にイヤホンで常に自分が呼ばれる可能性があり心が休まらずかなりの嫌悪感がありました。
一通りの基本教育が終わった後は自分専任になる廃棄品・不良品の処理作業の教育です。
狭い一室に案内されるとそこには所狭しと不良品たちが積み重なっていました。
話を聞くと誰も不良品の処理をしないために溜まりすぎてしまい専任のバイトを雇いたかったとのこと。
場所がへんぴなところにあったため、働き始めた頃は「なんかたまに見かける不良品をもくもくと組み立てしてる人」と他の人たちには噂されていたみたいです(笑)
ただ、基本一人仕事だったのと商品の組み立ては嫌いではなかったのでなかなかこのバイトはいいかもしれないなぁと思っていました。
しかしちょっとアルバイトに慣れてきたかもと思ったのもつかの間、バイトのシフト表記が分かりづらかったため出勤日を間違え無断欠勤をしてしまいました。
バイト先の副店長から電話がきて初めて自分が欠勤してしまったことを知り驚きとともに平謝りしたのですが苦笑して許してもらえました。
働き始めて数日目のことだったので副店長も速攻でバックレたのかと思ったことでしょう(笑)
そしてその時に「代わりといっては何だけど明日朝からきてもらえないかな?」と言われたのです。
無断欠勤の汚名を返上すべくできるだけ元気な声で「はい、いきます!」と快諾する自分。
この時はこの後起こる事件なんて知る由もなかったのです。
バイト開始後の地獄の7日目
それまでの組み立ての仕事とは違いその日の仕事は売り場を変更するという力仕事でした。
あれやって、これ動かしてと次から次へと指示が飛んできます。
バイト先ではかなりの大型商品も取り扱っているので商品を1m動かすのにもかなりの力を必要とします。
加えて朝の8時からの作業。
ずっと不摂生して深夜までゲームをしていた自分はそんな朝早くに起きたこと自体久しぶりでした。
案の定たかだか4時間の作業でヘトヘトで息も絶え絶えになってしまいました。
本当は最後の1時間は体調の変化に気づいてはいたのですが具合が悪いのでちょっと休ませてほしいとは言いだせなかったのです。
さらに作業の進捗が良くなかったため定時を回った後に追加で仕事を頼まれます。
「も…もうダメだ」
心の中で自分の体を支えていた何かが壊れお客様が座る丸椅子に座りこんでしまいます。
すでにお店は営業中になっており他にお客様もいる中勝手にお客様用の椅子に座る、非常事態に踏み込んだことで自分の中の不調が一気に爆発しました。
もはや座っていることすら辛くなって床に倒れこみます。
それを待っていたかのように体が大の字になったまま硬直し動けなくなります。
両手両足が今までになったこともないようにピーンと貼ってしまって立つことも寝返ることもできず広がる視界はただただ店の天井だけ。
それだけでも十分異常事態だったのですがその時の自分はそれよりもっと由々しき問題に直面していました。
それは呼吸です。
ゼェゼェゼェゼェ…どれだけ呼吸しても息ができている気がせずとても苦しい。
身体が動かなくても数時間は何とかなりそうですが呼吸は5分もできなければ死んでしまいます。
もちろんお客様も巻き込んで辺りは騒然とします。
自分は高い高い天井を見ながら「死にたくないけど死ぬしかない」と考えていました。
よく死を直前にすると今までの人生が走馬灯のように回るなんて聞きますが頭はパニック、心臓はバクバクでそんな余裕はなかったですね(笑)
幸いにも息が止まることはなく救急車がきてくれました。
途中で声をかけてくれたり水を飲ませてくれたりした人たちには感謝しかありません。
固まっていた身体もいくぶんか楽になり担架に乗せられて長い階段を降りている時には冷静さを取り戻しつつありました。
そのまま人生初の救急車に乗せられて病院へ。
一通りの検査を終えてお医者さんから診断結果を聞きます。
「過呼吸ですね。」
過呼吸…言葉は聞いたことがありましたがまったく想像もしていませんでした。
後で知ったのですが過呼吸の症状はただ呼吸をし過ぎるだけではなくてそれによって手足がしびれたり自分のように硬直したり、さらにひどくなると失神したりもするのです。
その時は過呼吸の原因までは言及はされませんでしたがストレスと運動による息切れとの合わせ技だと思っています。
過呼吸はパニック障害の症状の一つでもあるので自分がパニック障害である根拠がまた一つ増えてしまいました。
バイト開始早々1週間で無断欠席に救急車騒ぎ…。
正直一度このバイトを辞めて他のバイトを探す道も考えました。
まだ全く親しくない同僚たちから奇異の目で見られることは確実だし体力的にも足りていないのではないかと思いました。
でも。
でももう少し頑張ってみたい。
悩んだ末そう決めました。
まさかそのあと10年以上働くことになるとは…人生わからないものですね。
この時のことは今でも同僚にからかわれることがあります。
そんな時はちょっと恥ずかしい気持ちとうれしい気持ちの混ざった複雑な気分になります(笑)
コメント